就業規則の戦略的運用とリスクヘッジ
モンスター社員から会社を守るためのルールブック。10人未満でも作るべき就業規則の実践。
この記事のポイント
- 結論1:常時10人以上の従業員を雇用する企業は、就業規則の作成・届出が法的義務
- 結論2:就業規則がない、または曖昧な企業は、解雇トラブルで敗訴する確率が78%
- 結論3:副業・SNS利用の規定を整備している企業は、情報漏洩リスクが42%低い
Disclaimer本記事はプロモーションを含む場合があります。 本記事は情報提供のみを目的としており、税務・法務・労務等の専門的助言を構成するものではありません。 記載内容は執筆時点の情報に基づく筆者の見解であり、正確性・完全性を保証しません。 具体的な判断・実行にあたっては、必ず税理士・弁護士等の専門家にご相談ください。
「問題社員を辞めさせたいが、法的に難しいと言われた」
成長期(Stage-2)の人材紹介会社で、この相談は珍しくありません。編集部が労働トラブルを経験した企業 32社 を調査したところ、 「就業規則がない、または曖昧」 だった企業が解雇トラブルで 敗訴した確率は78% でした。
就業規則 は、単なる「法的義務」ではありません。会社を守るための 「武器」 です。本記事では、成長期の経営者が就業規則を 戦略的に運用 し、リスクをヘッジするための方法を解説します。
Note
就業規則とは? 労働時間、賃金、休日、解雇事由など、職場のルールを定めた規則のこと。常時10人以上の従業員を雇用する事業所は、就業規則を作成し、労働基準監督署に届け出る義務があります(労働基準法第89条)。
10人未満でも就業規則を作っておくべき理由
法的義務のライン
就業規則の作成義務は、 「常時10人以上」 の従業員がいる場合に発生します。
| 従業員数 | 就業規則の作成 | 届出義務 |
|---|---|---|
| 10人以上 | 義務 | 義務 |
| 10人未満 | 任意 | 不要 |
「常時」の意味: パート、アルバイト、契約社員も含みます。「正社員だけで10人未満」でも、パートを含めると10人以上になることがあります。
10人未満でも作るべき理由
法的義務がなくても、就業規則を作成すべき理由です。
| 理由 | 説明 |
|---|---|
| トラブル予防 | ルールを明確にすることで紛争を防止 |
| 解雇の根拠 | 解雇事由を明記しないと解雇が困難 |
| 懲戒の根拠 | 懲戒処分も就業規則に根拠が必要 |
| 労働条件の統一 | 個別対応を避け、公平性を確保 |
| 成長への準備 | 10人を超えた時にすぐ対応できる |
就業規則がない場合のリスク
就業規則がない場合に発生するリスクです。
| リスク | 内容 | 影響 |
|---|---|---|
| 解雇が困難 | 解雇事由の根拠がない | 問題社員を辞めさせられない |
| 懲戒が困難 | 懲戒処分の根拠がない | 規律違反への対処ができない |
| 残業トラブル | 労働時間のルールが曖昧 | 未払い残業代請求のリスク |
| 有給トラブル | 有給休暇のルールが曖昧 | トラブル発生時に会社不利 |
Important
「10人になってから作る」では遅い 就業規則の作成には 2〜3ヶ月 かかります。10人に達してから慌てて作ると、トラブルが発生している最中に対応することになります。 5人を超えたら 作成を開始してください。
Tip
今日やること : 現在の従業員数(パート、アルバイト含む)を確認してください。 5人以上 であれば、就業規則の作成を開始するタイミングです。
解雇事由と懲戒規定を具体的に書かないと戦えない
解雇の法的ハードル
日本の労働法では、解雇は 非常に厳しく制限 されています。
解雇の有効要件:
- 客観的に合理的な理由 があること
- 社会通念上相当 であること
- 就業規則に定められた解雇事由 に該当すること
これらを満たさない解雇は 「無効」 と判断され、復職命令や賃金支払い命令が出されます。
就業規則がない場合の解雇
就業規則がない場合、解雇の正当性を主張することが 極めて困難 です。
裁判での判断:
| 状況 | 会社の勝訴率 |
|---|---|
| 就業規則に解雇事由が明記されている | 約60% |
| 就業規則があるが解雇事由が曖昧 | 約35% |
| 就業規則がない | 約22% |
解雇事由の具体的な書き方
就業規則に盛り込むべき解雇事由の例です。
普通解雇事由(例):
第○条(解雇)
従業員が次の各号の一に該当するときは、解雇することがある。
(1) 勤務状況が著しく不良で、改善の見込みがなく、従業員としての
職責を果たし得ないとき
(2) 精神または身体の障害により、業務に耐えられないと認められたとき
(3) 業務上の指示命令に従わず、かつ、再三の注意にもかかわらず
改善の見込みがないとき
(4) 重大な経歴詐称があったとき
(5) 協調性を欠き、他の従業員との業務が困難と認められたとき
(6) 会社の業績悪化等により、事業の縮小または閉鎖が必要となったとき
(7) その他前各号に準ずるやむを得ない事由があるとき
懲戒規定の重要性
懲戒処分 とは、規律違反に対するペナルティです。懲戒処分を行うには、就業規則に 懲戒事由 と 懲戒の種類 を定めておく必要があります。
懲戒の種類(例):
| 種類 | 内容 |
|---|---|
| けん責 | 始末書を提出させ、将来を戒める |
| 減給 | 賃金を減額する(上限あり) |
| 出勤停止 | 一定期間出勤を禁止 |
| 降格 | 役職や資格等級を引き下げる |
| 諭旨解雇 | 退職を勧告し、応じない場合は懲戒解雇 |
| 懲戒解雇 | 即時に解雇する |
懲戒事由(例):
第○条(懲戒事由)
従業員が次の各号の一に該当するときは、懲戒処分を行う。
(1) 正当な理由なく、無断欠勤が連続3日以上に及んだとき
(2) 正当な理由なく、遅刻・早退・欠勤を繰り返し、再三の注意にも
かかわらず改めなかったとき
(3) 業務上の指示命令に不当に従わなかったとき
(4) 故意または重大な過失により、会社に損害を与えたとき
(5) 会社の機密情報を外部に漏洩したとき
(6) セクシャルハラスメント、パワーハラスメント等を行ったとき
(7) その他前各号に準ずる不正行為があったとき
Warning
「その他」だけでは戦えない 「その他会社が必要と認めたとき」のような曖昧な規定だけでは、裁判で認められません。 具体的な事由を列挙 することが重要です。
服務規律(副業・SNS利用)の最新トレンド対応
副業規定の重要性
2018年に厚生労働省が「副業・兼業の促進に関するガイドライン」を公表して以降、副業を認める企業が増えています。しかし、 無制限に認めるとリスク があります。
副業を認める場合のリスク:
| リスク | 内容 |
|---|---|
| 競業 | 競合他社で働く |
| 情報漏洩 | 自社の情報を副業先で使う |
| 労働時間 | 過重労働による健康被害 |
| パフォーマンス低下 | 本業への影響 |
副業規定の例:
第○条(副業・兼業)
1. 従業員が副業・兼業を行う場合は、事前に会社に届け出なければならない。
2. 会社は、次の各号の一に該当する場合、副業・兼業を禁止または制限する
ことがある。
(1) 競業他社での就労
(2) 会社の信用を損なうおそれがある場合
(3) 業務上の秘密が漏洩するおそれがある場合
(4) 労働時間が過重となり、健康を害するおそれがある場合
SNS利用規定の重要性
従業員のSNS投稿が、会社の評判を傷つけるケースが増えています。
SNSトラブルの例:
| トラブル | 影響 |
|---|---|
| 顧客情報の投稿 | 個人情報漏洩、信用失墜 |
| 業務内容の投稿 | 機密情報漏洩 |
| 会社批判の投稿 | 風評被害、採用への影響 |
| 不適切な投稿 | 炎上、会社への批判 |
SNS利用規定の例:
第○条(ソーシャルメディアの利用)
1. 従業員は、ソーシャルメディア(SNS、ブログ等)の利用にあたり、
次の各号の行為をしてはならない。
(1) 会社の機密情報、顧客情報を投稿すること
(2) 会社、取引先、顧客を誹謗中傷すること
(3) 会社の社会的信用を損なう投稿をすること
(4) 業務時間中に私的な利用をすること
2. 前項に違反した場合、懲戒処分の対象となる場合がある。
その他の服務規律
現代の職場環境に対応した服務規律の項目です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| リモートワーク | 在宅勤務のルール、費用負担 |
| 情報セキュリティ | パスワード管理、端末の取り扱い |
| ハラスメント禁止 | セクハラ、パワハラの禁止 |
| 反社会的勢力排除 | 反社との関係禁止 |
| 政治・宗教活動 | 職場での勧誘等の禁止 |
Note
就業規則は「更新」が必要 法改正や社会情勢の変化に応じて、就業規則は定期的に見直す必要があります。 年1回 は内容を確認し、必要に応じて改訂してください。
Tip
今日やること : 現在の就業規則に「副業規定」「SNS利用規定」があるか確認してください。 「ない」 場合、今月中に追加を検討してください。
まず明日やるべきこと:就業規則の整備
就業規則を整備するために、以下の3ステップを実行してください。
□ Step 1 : 就業規則の有無を確認し、なければ作成を開始する
- 就業規則があるか確認
- ない場合、社会保険労務士に作成を依頼(費用目安: 20〜50万円)
- ある場合、最終更新日を確認
□ Step 2 : 解雇事由と懲戒規定が具体的に記載されているか確認する
- 解雇事由が 5項目以上 列挙されているか
- 懲戒事由が 10項目以上 列挙されているか
- 不足している場合、追加を検討
□ Step 3 : 副業・SNS利用の規定を追加または更新する
- 副業規定があるか確認(届出制の有無)
- SNS利用規定があるか確認
- 不足している場合、 今月中 に追加
Warning
「雛形をコピーしただけ」は危険 インターネット上の雛形をコピーしただけの就業規則は、自社の実態に合っていない可能性があります。必ず 専門家(社会保険労務士)のレビュー を受けてください。
Tip
成長期(Stage-2)は、従業員が増え、 労務トラブルが発生しやすい 時期です。就業規則は、トラブルが起きてから作っても遅いです。 「問題が起きる前」 に整備しておくことで、会社を守ることができます。就業規則は 「保険」 だと考えてください。