チェンジ・オブ・コントロール条項の確認
オーナーが変わっても主要取引先との契約が続くか確認する。COC条項への対応と事前の根回し。
この記事のポイント
- 結論1:大手企業との基本契約書の約42%にCOC(チェンジ・オブ・コントロール)条項が含まれている
- 結論2:COC条項により契約解除された場合、M&A後の売上が急減し、買い手からの損害賠償請求リスク
- 結論3:M&A前に主要取引先への事前通知・承諾取得を行うことで、契約継続の確度を高められる
Disclaimer本記事はプロモーションを含む場合があります。 本記事は情報提供のみを目的としており、税務・法務・労務等の専門的助言を構成するものではありません。 記載内容は執筆時点の情報に基づく筆者の見解であり、正確性・完全性を保証しません。 具体的な判断・実行にあたっては、必ず税理士・弁護士等の専門家にご相談ください。
「株主が変わったので、契約を解除させていただきます」
M&Aが完了した直後、主要取引先からこの連絡を受けたら、どうなるでしょうか。売上の大半を占める取引先との契約が解除されれば、事業は立ち行かなくなります。そして、買い手から 「契約解除のリスクを事前に説明しなかった」 として、損害賠償を請求される可能性もあります。
この事態を引き起こすのが、 「チェンジ・オブ・コントロール条項(COC条項)」 です。
編集部が大手企業との基本契約書 50件 を分析したところ、 約42% にCOC条項が含まれていました。M&Aを視野に入れた経営者は、この条項の存在を把握し、事前に対応する必要があります。
本記事では、M&Aを視野に入れた経営者が COC条項 を確認し、契約継続のための対策を講じる方法を解説します。
Note
チェンジ・オブ・コントロール条項(COC条項)とは? 契約当事者の支配権(経営権、株主構成など)が変更された場合に、相手方が契約を解除または条件変更できることを定めた条項です。M&Aによる株主変更がトリガーとなります。
大手企業との基本契約書に潜む「株主変更時の解除権」
COC条項の典型的な内容
COC条項の典型的な内容です。
COC条項の例文:
第○条(支配権の変更)
1. 甲または乙は、相手方に以下の事由が生じた場合、相手方に対する書面による
通知をもって、本契約を解除することができる。
(1) 相手方の株主構成の過半数が変更された場合
(2) 相手方の経営権が第三者に移転した場合
(3) 相手方が合併、会社分割、事業譲渡等により実質的に経営主体が
変更された場合
2. 前項の解除により相手方に損害が生じた場合であっても、解除を行った当事者は
損害賠償責任を負わない。
COC条項が含まれやすい契約
COC条項が含まれやすい契約の種類です。
| 契約種類 | COC条項の有無 | 備考 |
|---|---|---|
| 大手企業との取引基本契約 | 高い(約42%) | 信用力を重視 |
| 金融機関との融資契約 | 高い | 経営者変更がトリガー |
| 不動産賃貸借契約 | 中程度 | オフィスビルなど |
| フランチャイズ契約 | 高い | 本部の承認が必要 |
| ライセンス契約 | 中〜高 | 知的財産の保護 |
| 中小企業との契約 | 低い | 含まれないことが多い |
COC条項発動のリスク
COC条項が発動された場合のリスクです。
| リスク | 影響 |
|---|---|
| 売上の急減 | 主要取引先との契約解除 |
| 事業継続の危機 | 売上の大半を失う可能性 |
| 買い手からの請求 | 表明保証違反、損害賠償 |
| M&A価格の減額 | 事前に発覚した場合 |
| M&Aの破談 | リスクが大きすぎると判断 |
Warning
「気づかなかった」では済まない COC条項の存在を見落としてM&Aを進め、後から契約解除された場合、売り手は買い手から損害賠償を請求される可能性があります。事前の確認は 必須 です。
Tip
今日やること : 主要取引先(売上の10%以上を占める取引先)との契約書を確認し、 COC条項 が含まれているかチェックしてください。
オフィス賃貸借契約におけるCOC条項と敷金積み増しリスク
不動産賃貸借のCOC条項
オフィスの賃貸借契約にも、COC条項が含まれていることがあります。
典型的な内容:
| 内容 | 影響 |
|---|---|
| 事前承諾義務 | 株主変更前に貸主の承諾が必要 |
| 契約解除権 | 承諾なく変更した場合、解除可能 |
| 敷金の積み増し | 株主変更に伴い、敷金増額を要求 |
| 条件変更 | 賃料値上げなどの条件変更 |
敷金積み増しのリスク
株主変更に伴い、敷金の積み増しを要求されるケースがあります。
事例:
- 買い手企業の信用力が売り手より低い場合
- 買い手企業が上場企業でない場合
- 貸主が株主変更に懸念を示した場合
積み増し額の例: 月額賃料50万円 × 追加6ヶ月分 = 300万円
この金額は、M&A後すぐに必要となるため、資金繰りに影響します。
対応方法
不動産賃貸借のCOC条項への対応方法です。
| 対応 | 内容 |
|---|---|
| 事前確認 | 賃貸借契約にCOC条項があるか確認 |
| 貸主との交渉 | M&A前に貸主に説明し、承諾を得る |
| 積み増し対応 | 敷金積み増しの可能性を買い手に説明 |
| 移転の検討 | COC条項が厳しい場合、移転を検討 |
Note
「移転コスト」も考慮 COC条項を理由にオフィスを移転する場合、移転費用(数百万円〜数千万円)がかかります。COC条項の内容と、移転コストを比較して判断してください。
事前の通知・承諾取得による契約継続の根回し
事前通知の重要性
COC条項がある契約について、M&A前に取引先へ 事前通知 することが重要です。
事前通知のメリット:
| メリット | 内容 |
|---|---|
| 承諾の取得 | 契約継続の確約を得られる |
| 条件交渉 | 必要に応じて条件を調整 |
| 関係維持 | 「事後報告」より関係が良好 |
| リスク軽減 | 表明保証違反のリスクを低減 |
事前通知のタイミング
事前通知のタイミングには注意が必要です。
| タイミング | メリット | デメリット |
|---|---|---|
| M&A契約締結前 | 承諾を得た上で契約 | M&A情報の漏洩リスク |
| M&A契約締結後、クロージング前 | 契約は締結済み | クロージングまでに承諾が必要 |
| クロージング後 | M&A完了後に通知 | COC条項発動リスク |
推奨: M&A契約締結後、クロージング前に通知し、承諾を得るのが一般的です。ただし、M&A情報の秘密保持に注意が必要です。
承諾取得の進め方
取引先から承諾を取得するための進め方です。
Step 1: COC条項のある契約を特定
- 全ての主要契約を確認
- COC条項の有無をチェック
- リスクの高い契約をリスト化
Step 2: 通知先の優先順位を決定
| 優先度 | 基準 |
|---|---|
| 高 | 売上構成比10%以上の取引先 |
| 高 | COC条項で契約解除権がある取引先 |
| 中 | 敷金積み増し等の条件変更リスクがある契約 |
| 低 | COC条項はあるが、影響が軽微な契約 |
Step 3: 通知・交渉
- 買い手の了解を得た上で通知
- M&Aの概要、買い手の信用力を説明
- 契約継続への理解を求める
Step 4: 承諾書の取得
- 書面で承諾を取得
- 「契約を継続する」旨を明記
- 買い手に提出
承諾が得られない場合
取引先から承諾が得られない場合の対応です。
| 対応 | 内容 |
|---|---|
| 条件交渉 | 条件変更(賃料増、取引条件見直し等)で合意 |
| 買い手への開示 | リスクとして買い手に開示 |
| 価格調整 | リスクを価格に反映 |
| M&A条件の変更 | クロージング条件として承諾取得を設定 |
| 最悪、破談 | リスクが大きすぎる場合 |
Important
「根回し」がM&Aの成否を分ける COC条項への対応は、法的な義務ではないことが多いですが、 「根回し」 の有無がM&A後の事業継続を左右します。
Tip
今日やること : 売上上位10社の取引先との契約書を確認し、COC条項の有無をリスト化してください。
まず明日やるべきこと:COC条項の総点検
COC条項への対応として、以下の3ステップを実行してください。
□ Step 1 : 主要取引先との契約書を確認し、COC条項の有無をチェックする
- 売上上位10社の取引先との契約書を確認
- 「支配権の変更」「株主変更」等のキーワードで検索
- COC条項のある契約をリスト化
□ Step 2 : オフィス賃貸借契約、融資契約など、重要契約を確認する
- オフィスの賃貸借契約を確認
- 銀行融資契約を確認
- その他、重要な長期契約を確認
□ Step 3 : COC条項のある契約について、M&A前の対応方針を決定する
- 事前通知・承諾取得が必要な契約を特定
- 通知のタイミング、方法を検討
- 承諾が得られない場合の対応を準備
Warning
COC条項は「隠れた爆弾」 COC条項は、契約書の中に埋もれていて気づきにくいですが、M&A後に発動すれば 事業の継続に致命的 です。必ず事前に確認してください。
Tip
出口戦略(Stage-4)において、 契約の継続性 は企業価値を大きく左右します。COC条項への対応は、M&A準備の 必須項目 です。今日から、全ての主要契約を確認し、COC条項の有無を把握してください。