Expert Insight
組織・仕組み化

参入障壁(Moat)の構築と強化

競合が真似できない「独自のDB」と「深い関係性」。

編集部編集部
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Executive Summary

  • 結論1:媒体DBに頼っている限り、あなたは「ただの代理店」である
  • 結論2:独自の「タレントプール」こそが最強の参入障壁(Moat)
  • 結論3:顧客のスイッチングコストを高める「入り込み」戦略

ウォーレン・バフェットは、投資先を選ぶ基準として 「経済的なお堀(Economic Moat)」 を最も重視します。 城(事業)を守るための深く広いお堀(参入障壁)があれば、競合他社は容易に攻め込むことができず、長期的に高い利益率を維持できるからです。

人材紹介業における「お堀」とは何でしょうか? 「スカウトメールをたくさん打つこと」でも「求人案件が多いこと」でもありません。これらは金さえ払えば誰でも真似できるからです。 本記事では、競合が絶対にコピーできない、あなただけの資産の作り方を解説します。

フロー型ビジネスからの脱却:ストック資産の有無

多くの人材紹介会社は、自転車操業(フロー型)です。毎月リセットされる売上目標を追いかけ、媒体という他人の畑で釣りをしています。 一方、強い会社は自社の池(ストック資産)を持っています。

項目フロー型(持たざる経営)ストック型(お堀のある経営)
候補者の供給源スカウト媒体(ビズリーチ等)自社タレントプール
顧客との関係案件をもらう立場(下請け)採用計画を作る立場(パートナー)
競争環境価格競争(手数料25%など)指名独占(手数料35%以上)
資産価値ゼロ(社員が辞めれば終わり)高い(データと仕組みが残る)
利益率低い(媒体費がかさむ)高い(再アプローチはタダ)

スカウト媒体に依存している限り、あなたは「媒体社の代理店」に過ぎません。媒体社が値上げをすれば、あなたの利益は吹き飛びます。

独自のタレントプールと企業パイプラインの資産価値

タレントプールの構築

「今すぐ客」だけでなく、「そのうち客」をどれだけ囲い込めるかが勝負です。 過去に面談した人、スカウトに返信はくれたが面談に至らなかった人。これら全てのデータをSFA/CRMに蓄積し、「タグ付け」 をして寝かせておくのです。

  • タグの例: 「SaaS志望」「年収800万以上」「IPO前フェーズ希望」
  • アクション: 3ヶ月に1回、彼らに有益な情報(求人ではない)をメルマガやLINEで送る。

これを3年続けると、1万人の独自リストができます。競合が1通2000円のスカウトメールを送っている横で、あなたはタダでLINEを送るだけで面談が組めるようになります。これが「お堀」です。

企業パイプラインの「深さ」

求人票をもらって終わり、ではありません。 人事担当者だけでなく、現場の「事業部長」や「役員」と直接繋がってください。

  • レベル1: 人事からメールで求人票が届く(誰でもできる)
  • レベル2: 人事とランチに行ける関係(少し強い)
  • レベル3: 事業部長から「今度新しい部署を作るから、誰かいない?」と構想段階で相談が来る(最強のお堀)

レベル3まで到達すれば、競合が入る隙間はありません。

顧客が他社に乗り換えられない「スイッチングコスト」の設計

顧客があなたから離れられなくなる(スイッチングコストが高くなる)仕組みを作りましょう。

1. 採用プロセスのBPO化

単に人を紹介するだけでなく、日程調整、一次面接代行、リファレンスチェックまで請け負います。 ここまで深く業務に入り込むと、顧客は「○○社(あなた)を切ると、採用業務が回らなくなる」状態になります。これが物理的なスイッチングコストです。

2. 独自データの提供

「競合他社の年収相場レポート」や「採用ピッチ資料の添削」など、他社が提供していない情報を提供し続けます。 「あそこは情報をくれるから、とりあえず契約は残しておこう」と思わせれば勝ちです。

Warning

Warning

「人柄」は資産ではない 「私はお客さんと仲が良いから大丈夫」という経営者がいますが、それは属人性が高いだけで、リスク要因です。 あなたが倒れたら終わりです。「あなた」ではなく、「あなたの会社が提供する機能」にお金を払ってもらえるよう、サービスを標準化・仕組み化してください。

まず明日やるべきこと:3ステップアクション

Step 1: 過去の全候補者リストの掘り起こし 過去3年間に接点のあった候補者をExcel(またはSFA)に集約し、現在の転職意欲を問わない「ゆるい繋がり」のリストを作る。

Step 2: トップクライアント3社への「逆提案」 求人をもらうのではなく、「御社の採用競合の分析レポートを作りました」と言ってアポを取り、事業部長クラスに会いに行く。

Step 3: 定期配信の仕組み化 タレントプールに対し、月1回でいいので「業界ニュース」や「キャリアコラム」を配信する設定をする(MAツールの導入検討)。

お堀は一朝一夕にはできません。しかし、今日最初のスコップを入れなければ、永遠に城は守れません。

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